要求や提案を表す語のあとの that節で、主語が3人称単数なのに動詞に s が付かない英文に出会うと、誤植かと迷います。この形は仮定法現在と呼ばれ、if節で事実と違うことを仮定する仮定法とは別の論点です。
この記事で分かること
- 仮定法現在が、if節の仮定法とどこで分かれるか
- that節の動詞が原形になる理由と、should を入れる形との関係
- 原形にするか、普通の時制のままにするかを決める4つの手順
対象:学校文法(仮定法現在・that節の動詞の原形)
仮定法現在とは何か(that節の動詞が原形になる形)
仮定法現在は、要求・提案・命令・必要性を表す動詞や形容詞に続く that節で、動詞が原形になる形です。if節で事実と違うことを仮定する仮定法とは別物で、述べているのは「実際にしてほしいこと」「そうなるべきこと」です。
次の1文で形を確認します。
- The manager demanded that Okabe check the inventory list before noon.
(責任者は、岡部さんに昼までに在庫表を確認するよう求めた。) → that節の動詞は、主語にも主節の時制にも合わせず、原形の check のままです。
| 語の種類 | 語の例(など) | that節で述べる内容 |
|---|---|---|
| 動詞(求める・命じる) | demand・require・request・order | 相手にしてほしいこと |
| 動詞(提案する) | suggest・propose・recommend | 相手に勧めたいこと |
| 動詞(強く求める) | insist | 相手に実行を迫ること(意味によっては別扱い) |
| 形容詞(It is 〜 that の形) | important・necessary・essential・vital・crucial | そうなることが重要・必要であること |
「仮定法現在」の呼び名は、教材によって扱いが揺れています。that節の原形、あるいは should の省略と説明する教材もあるためです。ここでは、高校の教材で扱われることが多い名で呼びます。
扱うのは、動詞と形容詞に続く that節の形です。名詞に続く形や、that節の外に原形が現れる慣用表現は扱いません。insist や suggest が「主張する」「示唆する」の意味のときは動詞が原形にならないことがあり、その見分けは手順で確認します。
if節で動詞を過去形にして今の事実と違う仮定を述べる形は、仮定法過去の使い方 現在の事実に反する仮定に整理されています。仮定法現在は、時制をずらさない別系統の論点です(仮定法の全体像 過去・過去完了・未来・wishの関係)。
that節の動詞が原形になる理由と、shouldを使う形との関係
要求・提案・命令の内容は、まだ実現していないことです。事実を報告する文ではないため、主語や時制に合わせて動詞を変える必要がなく、変化を付けない原形がそのまま使われると、教材では説明されます。
if節の仮定法は時制をずらして事実との距離を表し、仮定法現在は時制を変えない原形でまだ起きていない内容を表します。
that節の動詞の前に should を入れた形もあり、英国式の英語で多く、米国式の英語では入れない原形が使われるとされます。原形を should の省略と説明する教材もあり、どちらも同じ内容を表すとされます。
| 動詞の種類 | 原形の形 | should を入れた形 |
|---|---|---|
| 一般動詞 | that Okabe check the list | that Okabe should check the list |
| be動詞 | that the guide be at the gate | that the guide should be at the gate |
| 否定 | that the pool not open | that the pool should not open |
should を入れた形は、if節の中に入る should と見た目が同じです。if節の should は、多くの高校英文法教材で「仮定法未来」と呼ばれる形で、「万一」を表します(仮定法未来の使い方 were toとshouldの違い)。that節の should は要求や提案の内容に添える語で、「万一」の意味は持ちません。
ifを省略して文頭に出た Should は倒置の形で、that節の中の should とは位置も役割も違います。仮定法の倒置 If省略とWere・Had・Shouldを読むと、文頭の Should を元のif文に戻せます。
つまずくのは「動詞の変化」「語の意味」「否定の作り方」
誤りが出る場所を、動詞の変化・語の意味・否定の作り方の3つに分けます。
1つ目は、動詞の変化です。that節の主語が3人称単数だと s を、主節が過去形だと過去形を付けたくなります。普通の文の習慣ですが、仮定法現在ではどちらの変化も付けません。
2つ目は、語の意味です。insist には「強く求める」のほかに「事実として主張する」、suggest には「提案する」のほかに「示唆する」という意味があります。後者の意味では that節が事実を述べるため、動詞は普通の時制で書きます。
3つ目は、否定です。do not や does not で作りたくなりますが、この形では not を原形の前に置きます。

that節の動詞を決める4つの手順
以下の順番で確認してください。

手順1:that節の前の語が、求める・提案する・必要だと述べる語かを確認する
that節の前に、demand・suggest・insist などの動詞や、important・necessary などの形容詞があるかを見ます。これらの語は、that節の内容を「まだ実現していないこと」として述べるのが基本の使い方です。insist・suggest の例外は手順2で確認します。該当する語がなければ、この4手順は使いません。
手順2:that節の内容が、これからのことか事実かを確認する
that節に「〜すべきだ」の意味を足して読めるかを見ます。足して意味が通れば、これから実現させたい内容です。足すと意味が崩れるなら、事実や見込みを述べる内容です。その場合は手順3へ進まず、普通の時制で書きます。
手順3:これからの内容なら、that節の動詞を原形にする
主語が3人称単数でも s は付けず、主節が過去形でも過去形にしません。be動詞は be にします。学校文法では、この形は時制の一致の対象にならないと説明されます。
手順4:否定は not を原形の前に置く
否定の not は、do や does を使わず原形の前に置きます。should を入れる形を選んでも、表す内容は同じとして扱われ、否定は should not になります。
3つの文で手順を当てはめる
例1:3人称単数と過去形の主節
- The dentist recommended that Takeda wear a mouthguard at night.
(歯科医は、武田さんに夜はマウスピースを着けるよう勧めた。) → 手順2で「着けるべきだ」と読めるため、手順3で wears にも wore にもせず wear にします。
例2:形容詞とbe動詞
- It is essential that the tour guide be at the gate before the bus arrives.
(バスが着く前に、ツアーガイドが門にいることが不可欠だ。) → 手順1で essential を確認し、手順2で「いるべきだ」と読めるため、手順3で is を be に置き換えます。
例3:事実を述べる suggest
- The meter readings suggest that the water pipe is leaking under the floor.
(メーターの数値は、水道管が床下で漏れていることを示している。) → 手順2で「漏れるべきだ」とは読めないため、事実の報告なので is leaking のままです。
確認問題(編集部作成)
上の4手順だけで解ける問題を2問置きます。手を動かしてから解答を見てください。
【確認問題1】 市は、店舗の看板が歩道にはみ出していると判断し、店主の木下さんに金曜までの撤去を求めています。空所に入るのは、学校文法の扱いではどれですか。
The city requested that Kinoshita ( ) the sign from the sidewalk by Friday.
A. remove B. removes C. removed
【解答】 A
【解説】 手順1で requested を確認し、手順2で「撤去すべきだ」と読めると判断します。原形になるため、s も過去形も付きません。B は s を付けた形、C は過去形にそろえた形です。
【確認問題2】 イベントの主催者が、故障したプロジェクターを話題にしています。(a)は、まだ交換されておらず、主催者が交換を求めている場面です。(a)と(b)の空所に入るのは、A と B のどちらですか。
(a) The organizer insisted that the projector ( ) replaced before tonight. (b) The organizer insisted that the projector ( ) replaced last Monday.
A. be B. was
【解答】 (a) A (b) B
【解説】 (a)は手順2で「今夜までに交換されるべきだ」と読めます。これからの内容なので、手順3で be を選びます。(b)は last Monday とあり、すでに交換した事実の主張です。「交換されるべきだ」とは読めないため、過去形 was を選びます。
※本問・本例文は編集部が作成したオリジナルです。過去問・教材からの転載ではありません。
間違えやすい罠:s・過去形・insistの意味・否定
学校文法の扱いでは、原形にすべき文に s や過去形を付けた形も、事実を述べる文まで原形にした形も誤りとされます。前者は主語や主節の時制に引きずられた形、後者は語の意味を見ずに決めた形です。
| やりがちな判断 | 正しい判断 | なぜずれるか |
|---|---|---|
| The editor requested that Sato sends the draft by noon. | The editor requested that Sato send the draft by noon. | 普通の文で主語に合わせて s を付ける習慣が出ています(手順3) |
| The school required that every student wore a helmet on field trips. | The school required that every student wear a helmet on field trips. | 主節が過去形のため、that節も過去形にそろえています(手順3) |
| The sales report suggests that the new menu be popular with students. | The sales report suggests that the new menu is popular with students. | suggest の意味を確かめずに原形にしており、事実の文まで原形になっています(手順2) |
| The agency recommended that the tenant does not leave bicycles in the hallway. | The agency recommended that the tenant not leave bicycles in the hallway. | 否定文を does not で作る習慣が出ています。この形では not を原形の前に置きます(手順4) |
英国式の英語では、くだけた場面で普通の現在形が使われることもあるとされます。本記事は、学校文法で扱う原形の形に絞っています。
次に学ぶ論点:仮定法の全体像へ戻る
この論点は「仮定法未来の should の形」を前提にしています。手が止まる場合は前提から確認してください。
仮定法現在は、仮定法の学習順マップで最後の段階にあたります。
- 前提になる論点:仮定法未来の使い方 were toとshouldの違い
- 次に確認する内容:仮定法の全体像 過去・過去完了・未来・wishの関係
まとめ
- 仮定法現在は、要求・提案・命令・必要性を表す動詞や形容詞に続く that節で、動詞が原形になる形で、if節の仮定法とは別物です。
- 教材では、原形になる理由を、that節の内容がまだ実現しておらず、主語や時制で動詞を変えないためと説明します。
- 手順は、前の語を確認し、内容が事実かこれからのことかを見て、原形にし、否定は not を前に置く流れです。
- insist や suggest が「主張する」「示唆する」の意味のときは、that節が事実を述べるため、普通の時制を使います。
- should を入れる形は英国式で多く、米国式では入れない原形が使われるとされます。
本記事は英語学習を目的とした情報であり、個別の学習指導・答案添削ではありません。 試験制度・出題形式は変更されることがあります。受験の際は必ず公式の最新情報をご確認ください。 → 免責事項(/policy/)
最終確認日:2026-10-03

